東台湾の歴史を巡る旅 花蓮編 慶修院、楓林歩道と白雲歩道、吉安黄昏市場 【花蓮縣吉安郷】
【慶修院】
花蓮県吉安郷で最も有名な観光スポットは、「慶修院」。
1910年、七脚川事件により阿美族達の住んでいた平原を手に入れた日本は、台湾で初めての国営移民村・吉野村を開村しました。主に、四国の吉野川流域からの移民が多かったため、吉野村と名付けられました。
四国と言えば八十八か所巡りに、弘法大師を思い出す人もいるだろうが、吉野村でも例外ではなく、1917年に、真言宗の高野山派吉野布教所として今の慶修院が建てられた。
台湾総督府官營移民事業報告書によると、吉野村村民宗教信徒数は、真宗が192、天台宗が6、禅宗が28、日蓮宗が8、浄土真宗が11、真言宗が72、キリスト教が2、神道が5、天理教が3の合計327の信徒がいました。
慶修院には、弘法大師様以外に不動明王、毘沙門天が祀られ、吉野村の人達の心の拠り所として、また、喪葬法事の場として当時は使われていました。戦争中は、ここで小学生たちが勉強をしたという記録も残されています。
戦後、慶修院は一時廃墟になっていましたが、2003年に花蓮県政府によって修復工事が行われました。境内には、四国八十八か所の仏様が祀られています。
この慶修院だが、以前、この場所を管理していた方にお会いしてお話をしたことがあるのだが、その方が管理していた頃は、可能な限り日本時代の面影を残し、日本のお寺独特の「わびさび」を大切にするために、ほとんど何も手を加えずに保存管理していたそうです。しかし、縣長(知事)が変わり、「慶修院を観光スポットとして大々的に宣伝していく」という方針を打ち出し、その方の管理方法と対立。結果、新たに管理する会社が選出され、一気に様変わりしました。今の慶修院を見て、日本人観光客の方が違和感を覚える部分も多いとは思います。実際、筆者が真言宗の門徒さんをこちらにご案内した際に、「これはまるで何かのテーマパークの様だ。日本のお寺、日本の真言宗を知らない海外の人がここを見て、これが日本の真言宗なのだと思われる事は誠に遺憾だ」とおっしゃっていました。ご判断は、読者の方々にお任せするとしましょう。
尚、布教所は真言宗以外にも、西本願寺の布教所もありました。東臺灣新報地方版(1941年(昭和16年)8月15日付)によると、吉野村移住者の精神の拠り所となっている西本願寺布教所は、既存の布教所の裏手、吉野庄役場に隣接した場所に新たな布教所を建設。昨日14日午前10時より、樋口郡守をはじめ村の有力者らの参加のもと盛大に落成式が執り行われたとあります。
【楓林歩道と白雲歩道】
旧日本人移民村の吉野村を一望できる場所があります。
「楓林歩道と白雲歩道」。ここからは、旧吉野村だけではなく、花蓮市の街も一望できます。さらには、吉安の南側、壽豐郷(賀田村のあった場所)も臨むことができます。ここから旧吉野村を見て頂ければお判りいただけますが、日本人は移民村を作る際、まず、道路を碁盤の目に引き、そこに家や田畑を作っていきました。現在もその道路はそのまま使われており、綺麗な碁盤の目に区画整備されています。花蓮第二の街、吉安。ここも日本人移民の方々によって作り上げられた街だと思うと、先人達の偉業に改めて敬服するばかりです。
【吉安黄昏市場】
旅の楽しみの一つに、地元の市場を巡るというものがある。その地の人々の生活を垣間見る事が出来るのが市場だ。吉安郷に、お昼の3時過ぎから開く「黄昏市場」があります。
この市場は40年前に設立され、お店はセメントの台にタイルで装飾を施された、当時のままの面影を残した市場です。
元々この市場のあった場所には、テニスラケットの工場がありました。その工場敷地内に、近くに住む阿美族の女性たちが自分達で栽培した野菜や、山で収穫した山菜などを持ち寄り、路面販売していたことが始まりと言われています。その後、正式に敷地を借り上げ、この地に今の黄昏市場が出来ました。
市場内には、原住民野菜専門に取り扱っている区画があり、他県ではなかなかお目にかかれない新鮮な、珍しいお野菜や山菜、加工品が販売されています。
花蓮の地元の新鮮な野菜、果物、魚介類、豚肉、鶏肉といった生鮮食材から、衣料、靴、乾物、豆腐、惣菜等々、何でも売っているのが黄昏市場。夕方の4時を過ぎると徐々に人が増え、5時過ぎには買い物客で混雑します。威勢のいいお店の人の掛け声、値切る客。丁度、昭和30年代の日本の市場がそこにある。
花蓮では常に旬の物しか市場には並ばず、温室栽培の野菜などは売っていません。常に旬の野菜を食べるからこそ、身体にはいいとされているからです。さらに、有機栽培が台湾全国で第一位の花蓮だけあって、安心・安全な野菜、果物が安価で手に入ります。魚も、花蓮の海で獲れた新鮮なものばかり。輸入魚など売っていません。豚肉も台湾全国で最も有名なのが花蓮。臭みはなく、新鮮で、焼いても、揚げても、蒸しても、焚いてもジューシーさは失われません。鶏肉も同じで、さっきまで活きていた鶏が横一列に首を揃えて並んでいます。
筆者がとやかく書くよりも、やはりここは、実際にその場に行って肌で感じて頂きたい。
吉安黄昏市場
コメント
コメントを投稿